電車の窓の青い空に
白い雲が浮かんでいた
大きな魚のしっぽを掴んで
人魚がゆらゆら泳いでいた
大きな魚があなた!
小さな人魚がわたし!
めちゃいいシーンだったのに
電車が追い越して
人魚も魚も行ってしまった
舌が痺れるほど
渋いお茶がいい
渋ければ渋いほどいい
急須でお茶を濃く入れて
小振りの湯飲みでゴクンと飲むと
渋すぎる味が喉を下り
甘すぎるわたしがちょうどいい加減になる
スマホを片手に歩いていたら
道端で二輪並んで咲いていた
小鬼たびら子に頼まれた
「わたし達を撮ってください!」
ラブラブの素敵な写真になるといいなぁ
「はい、チーズ!」
春先から探し物が増えた
帽子はどこなの?
マフラーはどこなの?
手袋はどこなの?
探すのがだんだん面倒になって
無しで済ませていると
無しでもだんだん平気になってきた
「リンク」って何だろう?
プロレスの「リング」のことだろうか?
リングの上に乗ってジャンプしたり飛び蹴りしたり
リングをばねにして体当たりしたり
リングに弾かれてばたっと倒れたり
リングを揺らしてみたり跨いでみたり
ロープで囲まれた「リング」ならよく知っているが
わたしとなめくじは好みが似ている
レタスとキャベツが好き
わたし達は毎日戦っている
なめくじはぬるぬるだけが武器
でも大勢の仲間がいる
一匹やっつけても次から次へと出てくる
なめくじを取って
長靴でぎゅぎゅっと踏みつける
でも葉と葉のすき間に沢山いて
たじたじとなって
負けそうになる
六月の水色の空にあなたが満ちていて
あなたに見とれていたら指の先まで痺れて来て
ふらふらと目まいもして来て
家にたどり着いたら倒れ込んで
わたしはそのまま寝込んでしまった
油絵具の青と白をチューブから絞り出して
二つをぬるぬるとかき混ぜたら出来るほど
単純ではない六月の水色で
わたしを痺れさせる水色で
六月の水色の空にあなたが満ちていた
亀のようにのろいのに
兎のように昼寝をする
亀のように歩き続けねばならないのに
兎のようにすぐ休憩する
亀のようなわたしは昼寝をしてはいけません
兎のように休んではいけません
それでは兎に勝てません
でも亀は「甲羅干し!」と言って
石の上で昼寝をしている
亀は亀、兎は兎、わたしはわたし!
分厚くて丸々太った雲があちこちで
横にたなびく筋雲をハンモックにして
皆あおむいて昼寝をしていた
顔や胸や腹が六月の陽を浴びて
銀色に光り輝いていた
「風が吹かないから仕方ないんだ」と
皆あおむいて昼寝をしていた
家の外壁にへばりついていた
ヤモリとばったり目が合った
ここ十何年さっぱり姿を見なかったけど
ここも少しは住みやすくなったのかなぁ
ここも少しは自然に近づいたのかなぁ
NO~~~!
ここの家が相当古くなったのだ!