電線に山鳩がお尻を向けて並んで止まっていた
二羽の距離がちょっと遠くて
右が左へ寄って来て
左が左へ離れて行った
又右が左へ詰めて来て
又左が左へ離れて行った
突然右が怒って左へ飛びかかり
二羽が空中でバタバタと激しくけんかした
又二羽がお尻を向けて並んで電線に止まり、、、
バタバタ劇を何度も繰り返した後
右は後ろへ左は前へ飛んで行った
左が後ろの方で鳴いていた
「泣かな~いよ~泣かな~いよ~泣かな~い!」
歌声で魔法にかかった
十五の少女が堂々と
声量たっぷり朗々と
真心尽くして歌い上げると
わたしの心が溶けてしまった
握手をすると
手の平は泡のようにふわふわで
柔らかかった
歌姫は”白雪姫”だった
嵐が来たら又彼がやって来た
雨戸をがたがたさせ
ドアをばたんばたんさせ
ぎいぎいきしませ
あちこちで騒ぎまくった
探したけどいなかった
悪いことはしないが超うるさい
嵐が去ったら彼も去った
家の中が静かになった
フリーマンがメトロの車内で
座ったまま寝ていた
電車にブレーキがかかり始めると
進行方向へどんどん傾いて行った
電車ががくんと止まると
途端に反対方向へ大きく揺れて
傾いたまま寝ていた
見上げればいつもそこに愛するブルー
手が届かないけど愛するブルー
どうしょうもないけど愛するブルー
わたしが勝手に愛するブルー
広くて深くて遠い愛するブルー
美しい愛するブルー
わたしの愛するブルー
愛ブルー
濃い鼠色の怪獣ガメラやギドラやモスラが
灰色の大空で暴れまくっていた
大粒の雨がぽつぽつ落ちてきた
急いで帰った玄関先に
一枚の鳥の羽があった
拾い上げると
重さがなかった
ふわっと軽かった
「はるばる逢いに来てくれたの?」
機嫌があまり良くないけど大目に見て!
落ち込んでいるけど大目に見て!
気が滅入っているけど大目に見て!
元気がないけど大目に見て!
やる気がないけど大目に見て!
私の全部大目に見て!
そして長~い目で見て!
カップのダージリンはワインレッドで
一人ぼっちの私には花やかすぎて
一人ワインレッドを見つめていると
あなたを思い出して来て
ゆらゆらと揺らめいて来て
ときめいて来てうっとりして来て
あなたがそばにいるようで
お酒に酔った気分のようで
ワインレッドをごくんと
一気に飲み干した