「孤独だ孤独だ孤独だ」と
嘆くこともないなあ
ずっと孤独だったから
慣れてるなあ
孤独は子供の頃から自然で
当たり前だったなあ
スポーツウエアを着てるようで
ピッタリフィットしているなあ
神様がたっぷりと
分けてくださったんだなあ
時々心配されお聞きになる
「孤独を有効活用しちょるかね?」
いぬのふぐりの青い花
ほとけのざの赤い花
たんぽぽの黄色い花
ぺんぺん草の白い花
さくらの薄桃色の花
もう色々の花が咲いている
もうみんな走り出している
みんなの足は速い
速すぎて気忙しい
のんびり歩いていたら
春のバスに乗り遅れる
菜の花が沢山咲いている辺りで
小鳥がさえずっていた
窓を開けると
さっと飛んで行ってしまいそうで
姿も顔も名前も知らないまま
声だけ聴いていた
高音の甘い調べが急ピッチで
美鈴を転がすように響いて
うっとりと聴き惚れた
街へ買い物へ出かけると
沢山の人がマスクをしていた
マスクをしている人を見ると
「新型コロナウイルスを人に移したくない
優しい人かもしれない」と思った
マスクを取ると
「きっと美しいひとだろう!」
目の前で猫が体をなめていた
懸命になめていた
足をなめ肉球までなめた
腹をなめ下腹部までなめた
背中は首を回してなめた
顔と頭は前足でなでた
「自分を可愛がらないで誰が可愛がるの?
こうしてよくなめて可愛がるのよ!」
「見せて教えてくれている」と思った
でも単に綺麗にして
’恋人’に逢いに行っていたのかも
体に悪いと分かっていても
完全にやめられないでいる
お酒と砂糖とコーヒー
お酒を毎晩目の前で
父が美味しそうに飲んでいたけれど
母は全然飲まなかった
「かっこいい!」
お酒を完全にやめたら
「かっこいい!」と
自分を褒めて上げる
砂糖とコーヒーはちょっとだけで
枯れたすすきの群が土手で
白くなった細い穂を一斉に振っていた
種子が飛び出て行ってしまって
身軽な穂になって
風に吹かれて
手のように振り続けていた
下の枯れた葉の間から
緑の葉が見えた
「もうお別れなんですね、ありがとう!」
小学四年の時だったか
クラスの反省会で吊し上げられた
「掃除の時ホウキを持ちませ~ん」
「雑巾ばっかり持ってま~す」
「ホウキを持つべきで~す」
「そうで~す」皆賛成した
(ホウキを持つのが恥ずかしいのです!)
無口で一言も言えなかった
「謙虚はもう美徳ではありませんよ」
先生が優しく諭した
(ありがとう!)
雑木林に台風の爪痕があった
木が倒れ枯れていた
倒れても枯れていない木を見つけた
長々と倒れていたけれど
枝枝に蕾が付いていた
大きくて柔らかな蕾は今にも
花開きそうだった
春の午後誰もいない公園の
ベンチで一人休んでいたら
かさかさと落ち葉の音がした
振り向いたら
枯葉が一枚風に吹かれ
そばに寄って来たのだった
「枯葉と語り合ってもなあ!」
「君だったらなあ!」