なめくじは真っ赤な苺が大好きだから
苺のすぐ傍で寝て
赤くなるのを待っている
わたしは負けたくないから
負けずに早く起きて苺をもぎ取る
でもいつも負ける
仕方がないから
赤くない苺を先に取る
「負けなきゃいいの!」
家にあれば
あるだけ食べます
買っておけば
すぐに手が出て
すぐになくなってしまいます
だから買いません
大好きだから我慢します
わたしの手が届かない
遠い店の高い棚の上に居て下さい
わたしの大好きなダークチョコレート
今日は空を見なかったな
目の隅でちらっと見たかな
明日は仰向いて見たいな
ゆっくり見たいな
朝起きて顔を洗ったら
水を口に含み仰向いて
「かえるの合唱」を歌う
♪かえるの歌が~
聞こえてくるよ~
クワクワクワクワ
ケケケケケケケケ
クワクワクワ~
だんだん上手くなってきた
食洗器の連結部で
水道水が漏れていた
滴がシンクに落ちて音がした
おしぼりで受けて音を消した
おしぼりをスポンジに替えた
おしぼりは長い間置きっ放しだった
「たぶんズルズルでボロボロで悪臭が!」と
恐る恐るつまんで広げた
ズルズルもボロボロもなかった
悪臭もなかった
水道水は凄い!
皆好き好きがあるの
合う合わないがあるの
虫も小鳥も人も
皆同じ
いっぱい好きな所がないと
いっぱい合う所がないと
「嫌!」と言うのは我儘で
一つあれば十分
「それでもう十分です、神様!」
なるべく外に出て
なるべく人と会って
なるべく人と話して
と言われていた時は辛かった
なるべく外に出ないで
なるべく人との距離を取って
なるべく大勢でつるまないで
なるべく飲みに行かないで
武漢ウイルス予防とは言え
気持ちがスッと楽になった
きっと人人人がストレスだったのね!
「コロナ」の大流行で
外出自粛で
花を摘んで
透明な硝子ビンに入れ
卓に置いて眺めた
蚊遣り草
複雑に入り込んだ
黄緑色の葉の中で
桃色の花が映え
いい匂いがした
蚊遣り草が言った
「どうしても蚊が好きになれないの!」
雀が窓の外で
ずっと鳴き続けていた
じっと聞いていたら
片方の羽の先でそろばんを抑えて
他方の羽の先で玉をはじいて
そろばんを使っていた
雀の漫画を思い出した
「願いましてはパチパチパチパチパチ」
本当にはじいている!
「一生懸命何を計算しているの?」
蝉の抜け殻を見つけた
体も頭も目も足もすっぽりと
包む防護服になっていて
黄金色だった
かたつむりを見つけた
らせん状の廊下がずっと
奥の方まで続いていた
空っぽだった
可愛い服や小さな家を残した虫たち
わたしは何を残そう?
両手にあり余る灰?