蚊取り線香の煙が後から後から
外へ飛んで行った
外は風が強く吹いてるから
外の風に誘われたんだろう
でもそばで寝転んでる
わたしの所へも飛んで来た
まるで機嫌を取るように
申し訳なさそうに
「わたしのことなら気にしなくていいよ!」
毎日雨
いつも雨
いつまでも雨
今朝も雨
夜も雨
真夜中も雨
ずっと雨
「学校は3密です」
言われてみれば
密閉、密集、密接
その通り
学校が嫌いだったのは
3密のせいかなぁ
半日の土曜日が好きで
日曜日はもっと好きで
月曜から金曜までは嫌いだった
一番好きだったのが
「明日から夏休み!」
雨が長く降り続いて
みみずがうじゃうじゃ湧いた
住かは枯草の下
石の下
ビニール袋の下
段ボールの下
早速茄子や生姜や里芋の元へ
引っ越してもらった
「野菜を元気にして下さい!」
みみずが一緒に住んでくれたら
本当に野菜がすくすく育つ
あげは蝶の幼虫が
みつばの茎を食べていた
細長く伸びた茎の先に乗っかって
無数の短い足で茎につかまって
茎を先っぽから食べていた
一本を食べて
二本目も食べて
三本目も食べた
「よく食べるね!
よほど好きなのね!
好きで好きで好きで死ぬほど好きなのね!」
夜の雨が急に豪雨になった
テラスのブリキの床がけたたましく鳴り出した
「だだだだ―――――んだだだだ―――――ん」
ベートーベンの’運命’になった
「だだだだ――んだだだだ――んだだだだ――ん」
スピードアップしてきた
「だだだだーんだだだだーんだだだだーんだだだだーん」
聴いていたら
だんだん怖くなってきた
「家に居て下さい!」と
言われたら
よけい外に出かけたくなるらしい
それが普通らしい
でもわたしは「これ幸い」と
めちゃ嬉しい
「家を出て下さい!」と
もしも言われたら
大変困る
ずっと「ステイホーム」だから
板に付いているから
何年も前からの
顔見知りじゃないし
故郷の幼馴染の
かぜでもないし
少し前に中国武漢から来たばかりの
新しいかぜだし
どんなかぜかも良く知らないし
どことなく目付きが良くないし
下手に近づくと
やられそうだし
ちょっとやばそう
武漢肺炎が怖い
熱が出るのが嫌い
息苦しいのが嫌い
咳込むのが嫌い
薬と注射と検査が大嫌い
意識不明が怖い
人工呼吸器が怖い
死ぬかもしれないし
健康が一番好き!